沖縄のやちむんは奇跡の出会いをくれる!

沖縄の陶芸の発展は那覇「壺屋焼」から

「やちむん」とは、普段使いの器からちょっと値のはる美術品まで多種多様な「焼き物」のことで、沖縄を代表する伝統的な工芸品です。

透明な釉薬と鮮やかな色彩で人気のやちむん。

歴史は六千年以上前に作られた土器から始まり、琉球が世界と交易してきた歴史からもわかるように、中国、朝鮮、タイ、ベトナム、日本から陶磁器を輸入し、その影響を受けながら発展しました。薩摩から招いた朝鮮人陶工から学び 1600年代には技術力が向上、このあと琉球王府が工芸品制作を奨励し島内各地に分散していた複数の窯場を那覇市壺屋に統合しました。これが「壺屋焼」の始まりです。

近代になり琉球王朝が消滅すると王府の庇護がなくなり壺屋焼は危機を迎えます。しかし日用工芸品の美を発掘する民藝運動が盛んになる頃には、柳宗悦氏をはじめとする名高い陶芸作家や芸術家たちが、やちむん高く評価したことにより、後に人間国宝となる金城次郎氏などが陶工として壺屋焼きを発展させました。

壺屋から読谷へ

戦後は生活必需品である食器や壺などを作ることで生活の質が向上し、復興に繋がっていきました。ところが復興に伴い壺屋周辺に住居や商店が増え、登り窯から出る煙が公害だと問題に。薪を使う登り窯からガス窯に切り替える陶工のほか、昔ながらの製法にこだわり新たな場として読谷村に移る陶工も増えていき、壺屋焼と読谷焼が沖縄を代表するやちむんとなりました。

やちむんの登り窯

登り窯は壺屋に南窯がありますが現在は使われていません。写真は読谷の登り窯です。とても大きくてびっくり、一見の価値があります。ここで何人もの陶工たちが共同でやちむんを焼きます。登り窯の屋根は赤瓦、これも沖縄らしくて力強く美しい佇まいです。

やちむんいろいろ

沖縄の食器は磁器ではなく陶器なので、どちらかというと厚ぼったく素朴な風合い。割れる時もボコッと鈍い音で、大きな欠片になります。沖縄の赤土は粘りが強く火に弱く扱いにくいそうで何種類かの土をブレンドして用いるとのこと。大切な土は地面に穴を掘って保管しているそうです。

島結で使っている沖縄のやちむんは、那覇壺屋の育陶園にオーダーしたものと読谷の北窯の共同売店で買ったもの。

島結用のものにお店の名前を入れてもらったのですが、思ったより字が大きくて微妙に風情がないかも(笑)でも素敵な器なので気にっています。どの器もやちむんの伝統的な彩色と技術で作られています。

私が20代の時に買い求めたやちむん。奥の大小マカイは島袋常秀氏の作品、手前の2点は照屋佳信氏の作品です。やちむんはどれも微妙に正円ではなく、その歪みがあたたかみを感じさせます。やちむんには蛇の目という輪があり、重ねて登り窯に入れたときにつく印です。沖縄やちむんの特徴で、私はこの蛇の目の素朴さが大好きです。

照屋佳信氏のちょっと滲んだような感じが、またいいんです。この器には何を盛り付けても美味しく見えます。

下の写真、中城で工房を開いている仲村実氏の作品です。

沖縄の植物を個性的な絵付けで表現しています。これは月桃の葉が流れるような絵付けの湯呑み、泡盛のお湯割にもいいですね〜。

同じ月桃シリーズのカラカラとお猪口、お猪口は大小2サイズセットになってます。カラカラの丸っこくて独特な形がお気に入り。

この写真はもう随分前、ガラケーで撮影したものです。壺屋の陶器屋さんのジョーウインドウから、私たちを見つめていました。三線バージョンの他に、揉み手しながらニヤついているバージョンもあってすごく欲しかったのですが高価で手が出ませんでした〜。残念〜。

何年も時が過ぎ、島結を開店してからのこと。お世話になっている普天間製麺の奥様のお姉さんが経営されている小料理屋さんを訪れた時のこと。ふと目に入った小さなシーサー「あれ?この顔、似ている…」そう、おちゃめなシーサーに再会!

三線シーサーの写真を見せたら、比嘉泥仏(ひがどろぶった)氏の作品に間違いないとのこと。何年も思い焦がれたシーサーに、島結つながりの方のお店で出会えるとは!しかも比嘉泥仏さんはそのお店のお客さんだったとは…

このシーサー、醤油差しになっています。頭の角のような部分から醤油をたらたら~と。後姿のフォルムと尻尾が愛らしい。

醤油を注ぎ込む場所は鼻、鼻を取り外して注ぎます。ここにめちゃくちゃカワイイ仕掛けが…にっこり笑顔です!よく見ると伝統髪形カンプウ姿の女性に見えます。ほんとにお洒落。

シーサーといえば島結の入口で脅している(笑)これ。じつはこれにも出会いの奇跡のストーリーがあるんです。

お店を開店する前から沖縄に旅していた私達。当時松山にあった居酒屋さんがお気に入りでした。食べ物は抜群に美味しいし、店主さんの人柄も最高、夜遅くにお邪魔するようになっていました。で、いよいよ私達が島結を開店することになったことを告げるとお祝いにこのシーサーを贈ってくれたのです。沖縄の人らしい心遣いに感動しましたし、正直に嬉しかったです。

そしてお店をオープンしてしばらく経ったある日、男性が一人で来店。那覇出身で今は小田原在住、たまたま仕事で藤沢に来たそうです。話をしているうちに入口のシーサーの話になりました。すると「あれ?もしかしたらそのシーサーくれた人ってオレの後輩かもしれない」と言い出したんです。お店の場所、出身高校、部活など照らし合わせていくと…はい、ビンゴ~!なぜ藤沢本町で会うか~?すごい確率。またしてもやちむんにはパワー?この男性とはその後もいろいろな偶然がありました。

パワースポットが多いと沖縄、その土地の土を使って作られたやちむんにはそんな奇跡を起こす不思議な何かが宿るのかもしれません。やちむんを手にとって気に入ったら是非手に入れてください。きっとあなたにも素敵な偶然を届けてくれますよ~。

記★料理人punkichi