万能天然素材「リネン製クロス」はキッチンの定番にするべき逸品

タオルって綿だけじゃないの?

キッチンで使うクロス類の素材は綿、レーヨン、麻、それらの混紡が中心。子供の頃、実家では蚊帳ふきんか手ぬぐい、さらしを縫い合わせた綿素材のものを使っていた。それよりもっといいものがあると知ったのは20代前半、一人暮らしになってから知人のお宅に招かれたとき。彼女は才色兼備で料理上手、その人が使っていたのがリネン製のクロス。キッチンだけでなく洗面所にある手拭用のタオルもリネンだったのにはビックリ。だってタオルでしょ、普通は。ヨーロッパのホテルではリネンもおいてあるのだと。うーん、お育ちが違うという事か。
水を良く吸い込みすぐに乾いて衛生的だと教わった。美しい刺繍が施されたリネン製クロスは、彼女の機知に富んだお喋りや上品で華やかな雰囲気とよく似合っていた。

憧れのリネン製クロス、香港で入手

1990年、初めての海外旅行は香港。イギリス文化と中国文化が融合した香港には、素敵なものが沢山。英国式アフタヌーンティ、中華式飲茶、表通りのホテルや建物は重厚な西洋式だけれど裏通りにはアジアの市場が軒を連ねていた。ヨーロッパの高級ブランド店には興味なし。中国風雑貨が安価に買える中国資本のデパートが私のお目当て。当時、中国は今のような経済大国ではなく中国製品はかなり安価、横浜の中華街よりずっと安く中華食器や調理器具を買う予定だった。
が、そこには中華食器よりも私を魅了したものが…

そう、リネン製のクロス!

素敵な彼女の家で見たものとよく似ている。当時それは中国で輸出用に作られていた「ティータオル」。香港在住のイギリス人やヨーロッパ人が実用品やお土産として購入しているようだった。豊富な色と刺繍のなかから2種類6枚1組、合計12枚のクロスをお得に手に入れることが出来た。

ティータオルって何

18世紀のイギリス王室で生まれたリネン素材の布が「ティータオル」。紅茶を飲む習慣と関係があるのはその名前からもわかる。茶器を磨いたり拭いたり、お菓子を食べる時のナプキン代わりにしたり、ティーポットの保温布として包んだり等々。王室で使っていたものはきっと目を見張るような素晴らしい繊細な刺繍が施されていたに違いない。
現在では素材は麻だけでなくコットンのものもあり、使い方も多機能にわたる。キッチンタオルとしてはもちろん、てぬぐいのようでもあり風呂敷のようでもあり、カフェカーテンや暖簾のようにお洒落なインテリアとして使う人もいるようだ。


愛用の品は50㎝×35㎝、ティータオルとしてはやや小さめだが、キッチンクロスとしては丁度いい。白地に蝶々と花の刺繍、丁寧なドロンワーク(糸を抜いてかがって模様を作る技法)も施されている。手刺繍なので比べると一枚一枚微妙に違うからさらに愛着がわく。

クリーム地にバラと小花刺繍、こちらのほうがドロンワークが丁寧かな。紋章のような図案が美しい。白地のものより糸が細く細かいように感じる。もちろん刺繍は全て手作業によるもの。今同じような品物を買おうとしたらいったい幾らするのだろう?無地のシンプルなリネン製クロスに自分で刺繍をするのも楽しいかもしれない。


赤ストライプのナチュラルなリネンはリトアニア製。サイズが大きめなので調理器具用。繊細なクロスだけでなく、こういった素朴なものだと鍋や包丁、キッチン鋏などにもより気軽に使えるかもしれない。用途を決めて違うタイプのクロスを使えば、使うたびにその良さを更に実感できる。


 

リネン製クロスの優れているところ

どれも大切に毎日使っているお気に入りの品なのだが、実は沖縄に住むようになってから頻繁に使い始めた。今までは綿素材のワッフル織りのものを使っていたのだが、沖縄は湿度が高いのでクロス類がすぐに乾かない。しかも引越し前、荷物を減らすため古いクロス類の断捨離をしたのでリネン製クロスがようやく日の目を見たのだ。キッチンクロスは湿ったままの時間が長いと嫌な臭いの原因になるのだが、リネン製クロスから嫌な臭いがしたことは一度もない。丈夫で乾きも早く沖縄生活には欠かせないキッチンクロスとなっている。

◎吸水性が良く、すぐに乾く

リネン繊維は中空構造で水分を素早く吸収し、発散することができる。綿のおよそ4倍の吸水性があるが水分が繊維の奥まで入り込まないのですぐに乾く。

◎耐久性が高く丈夫で長持ち

同程度の厚みの綿と比べて2倍の耐久性があり、濡れると繊維が膨張し密着することで強さが一層増し、頻繁に洗濯しても摩耗しにくい。天然繊維としてはもっとも丈夫な素材と言われヨーロッパでは母や祖母の代のアンティークリネンが現在でも大切使われている。

◎汚れにくく、抗菌性がある

繊維に含まれるペクチンの効果や中空構造により水分だけでなく汚れも染み込みにくく落ちやすい。防臭効果もある。繊維自体に抗菌性があり雑菌の繁殖を抑えるのでパンをリネンクロスで包んでおくとカビが生えにくく日持ちする。

◎羽毛が少ない

頻繁に洗っても毛羽立ちが少ないのでグラスや食器を拭いても小さな毛羽残りがない。グラスの曇りもなくなりピカピカになってビックリ。

◎愛着がわく

リネンは使い始めてから10年後がいちばん美しいと言われる。使うほどに柔らかくなり、光沢が増し、変化していく。家事の場であるキッチンで使いながら、日々愛着を深めていくことができる品物があると生活の質もあがる。

万能天然素材「リネン製クロス」はキッチンの定番

キッチンを清潔に衛生的に保てるリネン製のクロスは、誰もがどこでも便利に使える万能クロス。是非一度使ってみて欲しい。最初はぜひグラスをくるりとひと拭き。

グラスはこの通り輝いている

リネン素材はキッチンで使うだけではない。夏になると着ることが多いリネン素材のシャツ、ワンピース、パンツなども、リネンであれば同じような性質を持っているということ。サイズが合わなくなったり、シミができてしまったり、破けてしまったときは捨てずにクロスやエプロンにリメイクすると良いという。

フレンチリネンのシャツ、長い間着ている。ちくちくしない柔らかな肌触り、リネン素材の服は丈夫で長持ちしていて、私はまだトライした事はないのだけれど…

記★料理人punkichi