沖縄の鬼退治!?鬼滅のカーサムーチー
旧暦の12月8日はムーチーの日、大切な行事のひとつで沖縄カレンダーには「ムーチーの日」と記載されている
ムーチーとは沖縄の言葉では「餅」のこと
内地の餅のようにもち米を蒸して搗くのではなく、餅粉に黒糖を加えて捏ね、平らに伸ばし、沖縄を代表するハーブでもある月桃(げっとう・サンニンとも呼ぶ)の葉で包み、蒸す。ムーチーの日が近づくと沖縄のスーパーや直売所に月桃の葉コーナーが登場。ムーチー作りの材料である餅粉や紅芋粉も隣に並んで、手作りしなくてはいけない雰囲気が漂う。
丁寧に束ねられた月桃の葉、無害なのでお皿に敷いて使うとオシャレ
我が家のムーチーはとある方が頂いたものをお裾分けしてもらったもの。その方が親しくしているおばあの手作りムーチー、心がこもっている貴重な品、沢山頂いてしまい食べきれないと言うことで、思いがけず手作り品を入手することができた。
美しく包まれたムーチー、そっと月桃を開くと独特の爽やかな香りが広がる。八重山胡椒ヒバーチの香りに少し似ている。最近は紅芋粉入りの紫餅や白糖を使った白餅などもあるが、このおばあのムーチーは昔ながらの素朴な黒糖餅だった。
レンジでちょっと温めると、とろっと、むちっとした蒸したての雰囲気を味わえる。熱を加えすぎると葉っぱにくっついてちょっと食べにくくなるので注意が必要。
ムーチーは魔よけのお供え物
葉を「カーサ」と呼ぶのでこの餅は「カーサムーチー」とも呼ばれる。蒸しあがった餅を葉に包まれたまま火を使う台所のコンロや仏壇にお供えし健康を祈願し厄を払う。また、子どもの年齢の数だけ紐で繋げたり、十字に結んで魔よけ・厄除けとして玄関に吊るすらしい。最近はあまりやらないと聞いてたが、なんと我が家のお隣さんの玄関にたまたま吊るしてあった~、失われていく風習がこんなに近くで見られるとはラッキー!
ビニール紐なのが沖縄らしい、いい感じ
月桃は生命力が強い
ムーチーを包んでいる月桃、実はとても身近な存在だ。公園や街角の垣根、個人宅の庭などでよく見かける。郊外にあるサトウキビ畑の脇あたりには2メートル以上に育った立派なものもある。こんなに沢山あるのにどうして買わなくてはならんのだ?と不思議に思うが、人によっては何十個も作るらしく、自分で刈るには手間がかかるからとのこと。
月桃はショウガ科の植物で、その葉には抗菌作用があり、葉に包んで加熱するといい香りがつくと共に中のものが腐りにくくなる。葉をお風呂に入れて入浴したり、乾燥した実をお茶にして飲むこともあり、最近は虫除けや除菌剤としても注目が集まっている。島結時代に常連さんの一人が、ずっと昔に沖永良部島から株分けした月桃を、神奈川の自宅で大切に育てていた。その葉を時々持ってきてくれるので入口に飾りながら、蒸し物などに使っていたのだが、生命力が強く2週間くらいは全く枯れずに緑々しく飾ることができた。またそれを活けていた水は臭くなったりしなかった。月桃の抗菌力は本物だと感心したものだ。
緑鮮やかな大きな葉、一枚の長さは50センチくらいある
鬼退治伝説、鬼滅のムーチー!
鬼餅とも言われるムーチー、孤独の淋しさから鬼になってしまった兄に、鉄の入った餅を山ほど食べさせ、妹が退治するという昔話がある。鬼退治といえば「鬼滅の刃」、とは言え炭治郎と禰豆子の美しい兄弟愛とは全く違う恐ろしい話だけれど。
詳しくは沖縄市のサイト ムーチー(鬼餅)由来 をどうぞ。
鬼退治ということで、節分の豆まきとも関係があるのかもしれない。これは人に聞いた話だけれどムーチーを蒸した後、鍋にたまった汁を厄払いの意味で庭や玄関の前に撒くそうだ。鬼は外~!と言っているかどうかは定かではないが。
記★料理人punkichi